物理 (処方)¶
処方の正本はどこにあるか
処方の正本は、ソースコード中のコメントです。概要は src/ionization.jl の
ヘッダに、詳細はそこから読み込まれる層ファイル (l0_numerics.jl …
l5_exit_*.jl) に、そして採用しなかった選択肢と参考文献 [1]–[17] を含む
最も詳しい歴史的な議論は src/ionization.py にあります。Python ファイルは
独立した v2 の基準実装で、κ 分解の v4 で加わった部分は Julia の層ファイルに
あります。このページは、それらの地図です。
何を計算するのか¶
孤立原子の内殻が高速電子 (E₀ = 30–400 keV) によってイオン化される過程を、 第一 Born 近似のもとで、混合動的形状因子 (mixed dynamic form factor, MDFF) を 通して扱います:
言葉で言えば、こうです。エネルギー \(E_0\) の入射電子が内殻 (たとえば Fe 1s) の 電子を叩き出し、エネルギー \(\varepsilon\) とある方向をもつ連続状態へ移します。 \(S\) は束縛状態と連続状態の間の遷移行列要素から組み立てられ、\(K\) だけ離れた 2 本のビームの組が生む 2 つの運動量移行 \((Q_+, Q_-)\) で評価されます。放出電子が どちらへ、どれだけの速さで出ていくかについて積分すると \(N(K)\) が残り、それを \(N(0)\) で割ると、非弾性像の非局在化を支配する符号つきの形状 \(F\) が得られます。 \(F(0) = 1\) に規格化されています。結晶中では、これが EDX マップの方位依存性を Bloch 波シミュレーションで記述するのに必要な非対角量です。ALCHEMI (Atom Location by CHannelling-Enhanced MIcroanalysis) は、その特性 X 線収量の方位依存性からサイト 占有率を求める手法で、Temari が供給するのはそのシミュレーションが使う形状因子で あって、占有率の精密化そのものは行いません。
一緒に出荷される絶対断面積は、エンジン自身の値ではありません。 Bote et al. (2009) の解析式から来るもので、この式は Bote & Salvat (2008) の 歪曲波 Born および平面波 Born 計算に、広いエネルギー範囲でフィットしたものです。 エンジン自身の \(N(0)\) から得られる \(\sigma\) は、健全性の目安としてだけ報告されます。
1 つのエンジン、6 つの出口¶
上の 2 つの積分が、ほかの出口が枝分かれする場所です。L5 より下の層は、どの出口が 動いているかを知りません。
| 出口 | 何が違うか |
|---|---|
| \(F(s, E_0)\) | 上の式全体を \(K\) の格子上で計算し、\(N(0)\) で規格化します |
| \(\mathrm{d}\sigma/\mathrm{d}\Delta E\) | \(\varepsilon\) 積分の手前で止め、その被積分関数を \(K = 0\) で評価して \(4\gamma^2 a_0^2\) 倍したものを報告します。同じ被積分関数を \(\Delta E\) と縮約すると、阻止能への寄与になります |
| \(\mathrm{d}f/\mathrm{d}\Delta E(Q)\) | 角度積分を丸ごと飛ばして \(2\Delta E\, S(Q, Q, 1)/Q^2\) を報告します。\(S\) は物理として \(k_i\) や \(k_f\) を一切参照しないので、GOS は \(E_0\) を持ちません |
| \(\delta_l\) | 連続状態ソルバだけを使い、行列要素ではなく漸近フィットの位相を報告します。散乱場の選び方は Mott 出口と同じです: 既定は中性原子の純静電場 :static、--fm で Furness–McCarthy の局所交換を足し、--xapot は比較用の標的 Xα 場です |
| Mott 弾性 | κ 分解の Dirac 位相からスピン保存振幅とスピン反転振幅を組み立て、\(\mathrm{d}\sigma/\mathrm{d}\Omega\)、\(\sigma_{el}\)、\(\sigma_{tr}\)、Sherman 関数を報告します。散乱場は 3 つ選べますが、互換ではありません。既定は :static で、純静電の \(-Z/r + V_H\) です。NIST SRD 64 (Powell et al., 2016) に対する \(\sigma_{el}\) の比は 1 keV 以上で 0.90–0.94 ですが、低エネルギーの重元素では悪化します (Au の 100 eV で 0.667)。--fm は Furness–McCarthy の局所交換 (Furness & McCarthy, 1973) を足したもので、交換の近似であり、エネルギー依存で高エネルギーでは消えます。数 keV 以上ではほとんど変わりませんが、それより下では大きく動きます (Au の 100 eV で 0.912、全体のばらつきは 0.90–1.06)。⚠ この「縮まる」は試験した範囲で 1 つの参照に対して比べた結果であって、--fm のほうが物理として正確だという実証ではありません。⚠ --xapot (標的自身の Xα 交換) は比較専用です: 入射電子が感じる場ではなく、高エネルギーでも消えません。数値は ロードマップ にあります |
| \(f_x(s), f_e(s)\) | 中性原子の密度を Fourier 変換し、Mott–Bethe の関係を適用します。イオン化チャネルもビームエネルギーも関わりません |
イオン化の機構の上に組まれた 4 つの出口は、後述する処方の限界と、\(\varepsilon\) 積分の検証状況を共有します。EELS 出口と GOS 出口で新しいのは形状だけです — 同じ被積分関数のスケールは、すでに Bote–Salvat に対してゲートされているからです。 弾性の出口が共有するのは原子と連続状態ソルバだけ、散乱因子が共有するのは原子 だけです。
パイプライン¶
以下の章番号は、ソース中の章番号です。表はレシピとして読んでください: 中性原子の場を作り (2)、その中で内殻軌道を解き (4)、放出電子が感じる場を作り (5)、 放出電子の波をその場で解き (3.6)、遷移密度を組み立て (6)、絶対スケールを表から 引く (7)。
| 章 | 段階 | 処方 |
|---|---|---|
| 2 | 中性原子の場 | 自己無撞着場 (SCF)。イオン化テーブル (dataset v5) では、局所 Xα 交換 α = 1 (Slater, 1951) と Latter (1955) の尾の補正を入れた Hartree–Fock–Slater です。完全 Dirac SCF が既定です (--nodscf で切れます): 占有軌道をすべて動径 Dirac 方程式から κ ごとに解き、小成分を密度に残します。重元素では決定的で、Au の \(f_x\) を \(s = 4\) Å⁻¹ で 10.8 % 動かし、1s 固有値を同梱 Bote–Salvat 表の K 端に乗せます (0.9908 → 1.00004)。散乱因子データセットと fx サブコマンドでは、交換は代わりに KLI です (fx の既定が KLI で、--xalpha で戻ります。イオン化の出口では --kli で切り替えます) — 後述 |
| 4 | 始状態 | その場の中で動径 Dirac 方程式を解きます。K、L1–L3、M1–M5 を \(\kappa\) を通じて \(j\) で分解し、大成分と小成分の両方を保持して一緒に規格化します |
| 5 | 終状態の場 | 内殻空孔を開けてイオンを再収束させ (緩和 core-hole SCF)、さらに Kohn & Sham (1965) 形式の \(2/3\) 静的交換を加えます — 歪曲波近似です |
| 3 | 旧来の連続状態 | 非相対論の v2 経路のための 3 区間 Numerov 積分で、漸近的に Coulomb 関数へ接続します |
| 3.5 | スカラー相対論 | --rel は旧来の v3 スカラー還元経路を再現します。文書化された Darwin 項の欠陥があり、新しい計算の既定ではありません |
| 3.6 | 出荷される連続状態 | v4 の既定は、連立動径 Dirac 方程式をすべての κ について解き、行列要素に両成分を残します |
| 6 | MDFF の組み立て | \(S = q_{nl} \sum_{l'\lambda} (2l'+1)(2\lambda+1)\,[3j]^2\,R\,R'\,P_\lambda(\cos\Theta)\)、ここで \(R_{l'\lambda}(Q) = \int u_{\varepsilon l'}\, j_\lambda(Qr)\, u_{nl}\,\mathrm{d}r\) です。対称な Ewald 対 \((Q_+, Q_-)\) にわたって組み、二重の角度積分の後に \(\varepsilon\) 積分を行います |
| 7 | 断面積 | Bote–Salvat の解析係数 (bote_salvat.json)。ここでは物理は何も計算しません — 表の参照と式の評価だけです |
2 つの製品、2 つの交換の扱い
イオン化テーブル (dataset v5) は原子場に局所 Xα 交換を使います。イオン化の 外部参照 — Dirac GOS データベース (Zhang et al., 2023)、µSTEM の形状因子 (Allen et al., 2015)、Oxley & Allen (2000) — がどれも局所交換の原子の上に 組まれており、Xα なら比較が意味を保つからです。散乱因子データセットは KLI を 使います。そこでの参照は Dirac–Hartree–Fock で、そこへ届くのが KLI だからです。 どちらの出口でもコマンドラインから両方を選べます。出荷時の既定は、それぞれの データセットが使ったものです。
KLI 交換 — OEP に対する交換のみの KLI 近似 (--kli)¶
局所 Xα 交換にはつまみが 1 つ (α) あり、そのつまみは過剰決定されています: 密度は α ≈ 0.75 を欲しがり、固有値とイオン化断面積は α = 1 を欲しがります。 これはフィットの失敗ではありません — Latter 補正つきの Slater の α = 1 は 固有値を束縛エネルギーに乗せるように作られており、α ≈ 0.7 は Hartree–Fock の 密度を再現する値です。1 つのスカラーで両方をまかなうことはできません。
--kli はこのつまみを取り除きます。交換は配置平均 (average of configuration)
について計算され、Krieger et al. (1992) の形の局所ポテンシャルとして表されます:
KLI は、交換のみの最適化有効ポテンシャル (OEP) に対する近似です: 軌道依存の Slater 部分 \(V_x^S\) と、各軌道が自分の交換エネルギーを平均として感じるようにする 定数 \(\Delta_a\) を保ち、完全な OEP が持つ軌道シフト項を落とします。Krieger et al. 自身の表では、OEP は \(\langle r^2 \rangle\) で Hartree–Fock に 0.1 % まで追随します。 KLI がそれに対して失うものは、特定できる 1 箇所に現れます (この節の最後で述べます)。
運用上大事な性質が 2 つあります。第一に、Latter 補正が消えます: \(V_H \to N/r\)、 \(V_x \to -1/r\) なので、有効場はひとりでに \(-(Z-N+1)/r\) へ向かいます — まさに 手で課していた値です。第二に、この漸近形は開殻でも成り立ちます。重みが 整数占有の自己項を運ぶからです。
これは整数占有に対する \(\langle n^2 \rangle = \langle n \rangle\) から来ます。 このためにスピン分極は必要ありません。
同じ構成が Dirac SCF にも配線されています。変わるのは 3 点だけで、ほかは 何も変わりません: 重なり密度は \(G_aG_b + F_aF_b\) になり (小成分は、電荷密度に 入るのと厳密に同じ形で交換に入ります)、角度係数は \([3j(j_a\,k\,j_b;\tfrac12,0,-\tfrac12)]^2\) にパリティ規則「\(l_a + k + l_b\) が偶数」を つけたものになり、副殻の縮退度は \(2(2l+1)\) の代わりに \(2j+1\) になります — これで、 スピン和が寄与していた因子 ½ が消えます。まとめて書くと、
jj 係数を κ について足し合わせると LS の係数が厳密に戻ります (T19a で 3.6×10⁻¹⁵ まで検証)。全体が \(c \to \infty\) で非相対論の KLI に帰着するのは、 そのためです。
フィットとの比較で分解できること・できないこと¶
日常的に使われる散乱因子表はフィットです: X 線では Waasmaier & Kirfel (1995) と Cromer & Mann (1968)、電子線では Peng et al. (1996) で、いずれも Hartree–Fock の 原子計算 (新しいフィットでは相対論的なもの) にフィットしています。フィットは フィット元の数値に対して自分自身の残差を持つので、フィットとの比較では、その残差 より大きな差しか分解できません。下の表の最後の列は、同じ元データに対する 2 つの 公表パラメータ化どうしの食い違い (Waasmaier–Kirfel と Cromer–Mann) で、これが 比較の到達下限です:
| Z | Dirac + Xα (イオン化の既定) | 非相対論 KLI | Dirac + KLI | 参照どうしのばらつき | |
|---|---|---|---|---|---|
| 6 | RMS |Δf_x|、s ≤ 2 [e] | 0.0404 | 0.0063 | 0.0054 | 0.0024 |
| 6 | 相対、s ≤ 2 [%] | 2.39 | 0.24 | 0.19 | 0.32 |
| 6 | f_e vs Peng、s ≤ 2 [%] | 1.62 | 0.58 | 0.51 | — |
| 14 | 相対、s ≤ 2 [%] | 2.34 | 0.18 | 0.14 | 0.19 |
| 14 | f_e vs Peng、s ≤ 2 [%] | 2.22 | 0.87 | 0.85 | — |
| 26 | 相対、s ≤ 2 [%] | 1.42 | 0.79 | 0.19 | 0.18 |
| 26 | f_e vs Peng、s ≤ 2 [%] | 2.56 | 0.64 | 0.67 | — |
| 79 | 相対、s ≤ 2 [%] | 0.82 | 2.68 | 0.12 | 0.13 |
| 79 | f_e vs Peng、s ≤ 2 [%] | 1.99 | 1.43 | 0.23 | — |
相対の測度では、Dirac + KLI は Waasmaier–Kirfel と、Waasmaier–Kirfel が Cromer–Mann と一致するのとほぼ同じ程度に一致します — つまり比較は参照の到達下限に 達しており、しかも処方のどこにも調整可能なパラメータはありません。イオン化側は 少しだけ逆方向へ動きます: C K / Fe K / Au L3 にわたる平均 |σ_own/σ_Bote − 1| は 0.073 (Dirac + Xα) → 0.077 (Dirac + KLI) です。σ は Bote–Salvat から出荷され、 σ_own は健全性の目安なので、これは安い代償です。
フィットではなく計算された参照との比較¶
エンジンの誤差がフィット自身の残差に達すると、比較はもう差を分解できなくなります。そこで
測定を OFFV1 — Olukayode et al. (2023) の数値 Dirac–Hartree–Fock による原子散乱
因子 — に対してやり直しました。Z = 2–118、s = 0–6 Å⁻¹、精度 10⁻⁵ の、フィット
ではなく計算された表です (refs/README.md に書いた手順で入手します。ファイルは
リポジトリの一部ではありません)。Thorkildsen (2023) も、フィットをベンチマークから
退役させるべきだと同じ主張をしています:
| Z | Waasmaier–Kirfel | Cromer–Mann | Dirac + Xα | Dirac + KLI | |
|---|---|---|---|---|---|
| 6 | 相対、s ≤ 2 [%] | 0.161 | 0.265 | 2.450 | 0.153 |
| 14 | 相対、s ≤ 2 [%] | 0.065 | 0.117 | 1.794 | 0.087 |
| 26 | 相対、s ≤ 2 [%] | 0.119 | 0.048 | 1.508 | 0.079 |
| 79 | 相対、s ≤ 2 [%] | 0.079 | 0.054 | 0.711 | 0.030 |
| 79 | max |Δf_x|、s ≤ 6 [e] | 0.105 | 7.82 | 0.499 | 0.030 |
Dirac + KLI は Waasmaier–Kirfel 自身の精度に並び、C・Fe・Au では上回ります — 金では相対測度で 2.6 倍、高 s での Cromer–Mann に対しては 3 桁以上です。高 s では、 4 つの Gauss 関数によるフィットは関数形が単に尽きてしまうのです。
これが言っていること、言っていないこと。OFFV1 は Dirac–Hartree–Fock です: 交換は厳密で、相関はありません。Dirac + KLI も交換のみで、交換は KLI の局所近似で 扱われ、相関はありません。したがってこの比較が測るのは同じ物理への忠実さであって、 物理の完全さではありません — 0.03–0.15 % の一致は、KLI の密度が DHF の密度をその 水準で再現していること (OEP 族の既知の性質) と、数値計算が健全であることの両方を 支持しますが、その 2 つを分離はしません。相関は依然として欠けており、化学結合に 関することもすべて欠けています。
コストと注意点。SCF は 1.9 倍遅くなります (Au で 30 s → 56 s。元素ごとに 1 回で、 あとはキャッシュされます)。3 つの残差が知られていて、繕うのではなく定量化して あります:
- 交換は交換のみで、相関はありません。Ne の KLI HOMO は −0.849 Ha と出ますが、 実験のイオン化ポテンシャルは 0.792 Ha です — この 7 % の隔たりが、相関と緩和が 補うはずの分です。
- Dirac 経路では HOMO が κ で分裂し、その相方は格子の端まで非ゼロの KLI 定数 \(\Delta\) を保ちます (Ne 2p½ は 30 a₀ でもまだ密度の 29 % を持っています)。これは \(V_x\) に 2–3×10⁻⁴ Ha の定数オフセットを残します。このオフセットは取り除いていません: 束縛状態のポテンシャルに定数を足しても、すべての固有値が等しくずれるだけで、 波動関数 — したがって密度と、そこから出荷されるすべて — は厳密に変わらないから です。T19c がその大きさを押さえています。
- KLI は OEP ではありません。落とした軌道シフト項は、d ブロックで \(s \to 0\) に おける \(f_e\) の不足として現れます — 最大 2 %、Cr と Cu では \(s = 0.02\) Å⁻¹ で 4 % — 一方 \(f_x\) の動きは高々 0.22 % です。この不足は、Krieger et al. (1992) が 表にした \(\langle r^2 \rangle\) の KLI/HF 比を追います — 彼らの閉殻 10 原子では 直接の一致、開殻の d 元素については推定です。 文献との比較 を参照してください。
モデル識別子¶
どの実行も、使った処方のモデル id を印字して記録します。id は連続状態を名指しする 基底部と、ほかの選択を表す接尾辞からなります:
| 基底 id | 意味 |
|---|---|
DHFS-KS23-Dirac-jsplit-fullrange-sym-v2 |
旧来の非相対論連続状態 (--no-kdirac)。Python 実装と同一です。 |
DHFS-KS23-DiracB-SRC-jsplit-fullrange-sym-v3 |
旧来のスカラー相対論連続状態 (--rel)。再現のために残してあり、新しい仕事には勧めません。 |
DHFS-KS23-DiracB-KDIRAC2C-jsplit-fullrange-sym-v4 |
現在の CLI と出荷物理: κ 分解の 2 成分 Dirac 連続状態。dataset v5 で変わったのはサンプリングと形式であって、この物理 id ではありません。 |
| 接尾辞 | 意味 |
|---|---|
-DSCF |
原子場に完全 Dirac SCF (既定。--nodscf では付きません) |
-KLI |
KLI 交換 (--kli。上述)。-Xa<nn> は、局所交換で α が標準でないことを示します |
-FZ / -FZS |
中性 KS 場 / 静的な場での厳密 frozen core (--frozen / --frozen-static) |
-TR |
横断的 (Møller) 核を含む — edge 出口の既定 |
したがって、素の julia src/ionization.jl 26 K 200 は
DHFS-KS23-DiracB-KDIRAC2C-jsplit-fullrange-sym-v4-DSCF を印字します: κ 分解 Dirac
連続状態、Dirac SCF の原子場、Xα 交換、緩和 core-hole、縦の核 — v5 テーブルを
作った処方です。散乱因子データセットは独自の id DHFS-KLI-DTM1-dt16-neutral-v1 を
持ち、こちらは数値計算のバックエンドと動径格子も名指ししています。
id が識別するのは物理であって、求積ではありません。同じモデル id で
--quick / --high の設定が違う 2 つの実行は、1 つのデータセットの中で
入れ替え可能ではありません。
数値計算の機構¶
依存ゼロの約束のため、すべて自前で書いています:
- 球 Bessel 関数 \(j_\lambda(x)\) — \(x > \lambda_{\max} + 10\) では上向き漸化式、 それ以外は Miller の下向き漸化式に再スケーリングの段を加えたものです。8 レーンの SIMD 版がスカラー版と並走し、両者のビット同一を検査しています。
- Coulomb 関数 \(F_l, G_l\) — Steed の連分数法 (Barnett, 1982) で、フィット窓の
内側は Numerov で伝播します。
selftestの T0 で mpmath の値と突き合わせています。 - スプライン、PCHIP、Gauss–Legendre 求積、ODE 積分器 — SciPy/NumPy と同じ アルゴリズムに従う自前の実装で、差は ~1e-14 の水準の丸めだけです。
- 3j および 6j 記号 — ここに現れる \([3j]^2\) の組み合わせに閉じた形を使い、 高い \(l\) でもオーバーフローしないように評価します。6j は κ 分解の角度因子に 入ります。
既知の限界¶
数値の意味の及ぶ範囲を定めるものなので、はっきり書いておきます:
- 平均場。多重項も、サテライトも、配置間相互作用もありません。
- 第一 Born。過電圧 \(u = E_0 / E_\text{edge}\) が 1 に近づくにつれて信頼性が 落ちます。\(u \approx 2\) を下回ると、エンジン自身の \(\sigma\) は参照値のおよそ 0.3 まで落ちますが、これは欠陥ではなく想定どおりの挙動です。
- 直接–交換の干渉なし。\(-\mathrm{Re}(DX^*)\) 項は含まれていません。
- 孤立原子。化学状態依存も、固体の状態密度もありません。
- 相対論は中心場の扱いにとどまります。v4 の既定は κ 分解の Dirac 束縛状態と 連続状態、および行列要素の両成分を含みますが、Breit 項と直接–交換の干渉は 含みません。
- 散乱因子表は交換のみで、しかも OEP ではなく KLI です: 相関はどこにも ありません。KLI の不足は d ブロックの \(f_e(s \to 0)\) に見えます (上述)。
- M 殻の外部検証は限られています。M1–M5 は実装済みで内部の本番ゲートを 通りますが、系統的な外部照合は K・L に比べてはるかに薄く、とくに Bote–Salvat の 絶対断面積についてそうです。
定量的な white line は意図的に対象外です: 平均場の孤立原子は、多重項も固体の DOS も 生み出せません。予定している道筋は、まず振動子強度の和則を通して不足分を測ること です — ロードマップ を参照してください。
正しさの修正と、それがテーブル再生成なしで出荷された経緯¶
球 Bessel 関数の Miller 下向き漸化式は \(j_0(x) = \sin(x)/x\) で規格化します。
\(x \approx n\pi\) の近くでは、これが \(0/0\) になります: 漸化式から出る生の
\(\tilde{\jmath}_0\) は丸め誤差のノイズなので、スケール因子が壊れ、すべての
\(\lambda\) が汚染されます。誤差は \(10^{-16}/|\sin x|\) でスケールし、生の値がちょうど
0 に乗ってスケールが Inf になり、出力全体が NaN になった事例も捕まえました。
修正は閾値ガードです: \(|j_0| < 10^{-8}\) より下では、漸化式ですでに得られている \(j_1\) で代わりに規格化します。その窓の外では命令列が変わらないので、この修正は 旧コードがもともと壊れていなかった場所すべてでビット同一です — だから、 テーブルの再生成を待たずに単独で出荷できました。
出荷テーブルへの影響: ガードは Miller 規格化 1 回あたり約 4×10⁻⁸ 回発火し、その 結果の \(F\) の変化は相対で高々 ~2×10⁻¹⁴ で、物理的な許容 10⁻¹⁰ より 4 桁下です。
これはプロジェクトが一般に従うパターンでもあります: 再現性の規律 を参照してください。
参考文献¶
- Allen, L. J., D'Alfonso, A. J. & Findlay, S. D. (2015). Modelling the inelastic scattering of fast electrons. Ultramicroscopy 151, 11–22.
- Barnett, A. R. (1982). COULFG: Coulomb and Bessel functions and their derivatives, for real arguments, by Steed's method. Computer Physics Communications 27, 147–166.
- Bote, D. & Salvat, F. (2008). Calculations of inner-shell ionization by electron impact with the distorted-wave and plane-wave Born approximations. Physical Review A 77, 042701.
- Bote, D., Salvat, F., Jablonski, A. & Powell, C. J. (2009). Cross sections for ionization of K, L and M shells of atoms by impact of electrons and positrons with energies up to 1 GeV: Analytical formulas. Atomic Data and Nuclear Data Tables 95, 871–909. Erratum: 97 (2011), 186.
- Cromer, D. T. & Mann, J. B. (1968). X-ray scattering factors computed from numerical Hartree–Fock wave functions. Acta Crystallographica A 24, 321–324.
- Furness, J. B. & McCarthy, I. E. (1973). Semiphenomenological optical model for electron scattering on atoms. Journal of Physics B 6, 2280–2291.
- Kohn, W. & Sham, L. J. (1965). Self-consistent equations including exchange and correlation effects. Physical Review 140, A1133–A1138.
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