回折シミュレータ (Crystal Diffraction)¶
回折シミュレータ (Crystal Diffraction) は、単結晶のX線回折・中性子線回折・電子線回折パターンをシミュレーションします。
ウィンドウは、左側に回折パターンの描画エリア、右側にスポット特性(波長・入射ビーム・強度計算・外観など)の設定パネルが並びます。波長と入射ビームの組合せで撮影モード(X線回折・SAED・PED・CBED)が決まり、それに応じて右側パネルの構成が切り替わります。
このページと各モードページの分担¶
- このページ(まとめ): 全モードで共通の操作(ショートカット・メニュー・ツールバー・画面/検出器情報・オーバーレイのタブ・スポット情報・検出器ジオメトリ・動的圧縮)をまとめます。
- 各モードページ: そのモードを選んだときに 右側に現れる全設定項目(波長・入射ビーム・強度計算・外観・ブロッホ波設定・プリセッション設定など)を、1ページで完結するように網羅します(モード間で一部重複します)。
| モード | 内容 | ページ |
|---|---|---|
| X線(・中性子)回折 | 単結晶X線/中性子回折パターン(平行・歳差X線・Back Laue) | X線回折シミュレーション |
| SAED | 平行ビーム電子回折(制限視野電子回折) | SAEDシミュレーション |
| PED | 歳差電子回折(プリセッション) | PEDシミュレーション |
| CBED | 収束電子線回折 | CBEDシミュレーション |
モード早見表¶
波長(線源)と入射ビームの組合せから、設定すべきページを引きます。
| 波長 | 入射ビーム | モード | ページ |
|---|---|---|---|
| 電子線 | 平行 | SAED | SAEDシミュレーション |
| 電子線 | 歳差(電子=PED) | PED | PEDシミュレーション |
| 電子線 | 収束(CBED) | CBED | CBEDシミュレーション |
| X線 | 平行 | X線回折 | X線回折シミュレーション |
| X線 | 歳差(X線) | 歳差X線(プリセッションカメラ) | X線回折シミュレーション |
| X線 | Back Laue | 後方反射ラウエ | X線回折シミュレーション |
| 中性子 | 平行 | 中性子回折 | X線回折シミュレーションの中性子節 |
注記: 入射ビームの選択肢は波長で変わります。電子線では 平行・歳差(電子=PED)・収束(CBED)、X線では 平行・歳差(X線)・Back Laue、中性子では 平行 のみです。歳差(電子=PED) または 収束(CBED) を選ぶと、強度計算は自動的に 動力学的(Dynamical) へ切り替わります。
キーボード・マウスショートカット¶
X線・SAED・PED のシミュレーションで共通の回折パターンウィンドウに適用されます。パターン上のドラッグは結晶を回転させます。ここにはホイールズームはありません — ズームは右クリック/右ドラッグで行います。
| ショートカット | 動作 |
|---|---|
| F1 | このページのオンラインマニュアルを開く |
| 中心付近を左ドラッグ | 結晶を傾ける |
| 外周を左ドラッグ | ビーム軸まわりに結晶を回す |
| スポットを左ダブルクリック | 反射の詳細を表示(指数・d・構造因子・励起誤差) |
| 中ドラッグ | パターンを平行移動 |
| CTRL + 中ドラッグ | 検出器中心を移動(検出器領域の表示時) |
| 右クリック | ズームアウト |
| 右ドラッグで矩形選択 | 選択範囲にズームイン |
| ステータスバーを右ダブルクリック | 現在の設定のテキスト要約をコピー |
| 点灯中のレイヤーボタン(Spots / Kikuchi / Debye / Scale)を右ダブルクリック | そのレイヤーを点滅 |
ここから開く補助ウィンドウには、さらに以下があります。
| ショートカット | 動作 |
|---|---|
| ステレオネットを左ダブルクリック — TEMホルダー | ホルダー傾斜をその点に設定 |
| 矢印キー — TEMホルダー | ホルダー傾斜をステップ送り(先に Arrow keys をチェック) |
.prm ファイルや画像をドロップ — 検出器ジオメトリ |
検出器幾何/重畳画像を読込 |
.txt プロファイルをドロップ — 動的圧縮 |
圧力/時間プロファイルを読込(グラフの赤線をドラッグして走査) |
メインウィンドウのアプリ全体ショートカット(CTRL+SHIFT 系)は、このウィンドウにフォーカスがある間も動作します(メインウィンドウ 参照)。
→ 全ウィンドウの一覧は 21. キーボード・マウスショートカット を参照。
目的別最速手順¶
| 目的 | 操作の入口 | 参照ページ |
|---|---|---|
| 平行ビームの電子回折(SAED)を出す | 入射ビームを 平行、波長を 電子線にする | SAEDシミュレーション、平行ビーム SAED の計算 |
| X線単結晶回折を出す | 波長を X-ray / Synchrotron へ切り替える | X線回折シミュレーション |
| 歳差電子回折(PED)を出す | 入射ビームを 歳差 (電子) にし、半頂角とステップを設定する | PEDシミュレーション |
| 収束電子線回折(CBED)を出す | 入射ビームを 収束 (CBED, 電子線のみ) にし、CBED設定ウィンドウで条件を決める | CBEDシミュレーション、CBED の計算 |
| 動力学計算の反射一覧を確認する | 動力学的効果を選び、スポットの詳細情報または 詳細を開く | 動力学計算(共通コア) |
| 実験像と重ねて検出器幾何を合わせる | 詳細から検出器ジオメトリ設定を開き、重畳画像を使う | 検出器座標系 |
メインエリア¶
画面中央に回折パターンがシミュレーションされます。
マウス操作¶
ページ冒頭の「キーボード・マウスショートカット」を参照してください。
マウス位置¶
カーソル位置に対応する情報 (カーソル位置の q, d, 2θ, 方位角など) がパターン上部のステータス行に表示されます。詳細 をチェックすると、最近接反射の (hkl)・励起誤差・構造因子などのより詳細な情報が追加表示されます。
ファイルメニュー¶
| メニュー項目 | 説明 |
|---|---|
| 保存 | 表示中の回折パターンをファイルに保存 |
| 検出器領域を保存 | 検出器領域のクロップのみを保存 |
| コピー | 表示中の画像をクリップボードへコピー |
| 検出器領域をコピー | 検出器領域のクロップのみをコピー |
プリセット¶
波長・検出器ジオメトリ・タブ設定・スポット特性などのシミュレータ設定一式をプリセットとして保存・呼び出しします。装置・取得モード間で素早く切り替えるのに便利です。
ツールバー¶
| ボタン | 説明 |
|---|---|
| 回折斑点 (Spots) | 回折スポットレイヤーの表示/非表示 |
| 菊池線 (Kikuchi) | 菊池線レイヤーの表示/非表示 |
| デバイリング (Debye) | デバイリングレイヤーの表示/非表示 |
| 目盛線 (Scale) | スケール線レイヤーの表示/非表示 |
| 面指数 / d値 / 1/d / 距離 / 2θ / χ / 励起誤差 / 構造因子 | スポットに添えるラベルの選択 |
画面と検出器情報¶
画面¶
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 解像度 | 1 ピクセルあたりのサイズ (mm)。実際の検出器ピクセルサイズである必要はなく、表示スケールとして扱われ、マウスズームで自動更新されます |
| Size (W×H) | 描画領域のピクセル幅・高さ。ディスプレイ解像度によっては非常に大きな値は設定できません |
| 中心をセット / 中心を固定 | パターン中心を描画領域内の任意ピクセルに設定し、必要に応じて固定します。固定するとマウスパンで中心が動かなくなります |
| 水平反転 / 垂直反転 / ネガティブ画像 | 表示パターンの幾何反転(水平/垂直)とコントラスト反転。実験像の向きやコントラストに合わせるときに使用します |
| 逆空間表示 | パターン上にエワルド球と逆格子ベクトルを重ねて描画し、どの反射が励起されているかを可視化します |
検出器(カメラ長)¶
- カメラ長2 : 試料から検出器までの距離 (mm)。
- 詳細 : 検出器ジオメトリ設定ウィンドウ(後述の検出器ジオメトリ節)を開きます。
その他¶
- 回転の感度 : マウスドラッグ 1 ピクセルあたりの結晶回転量。
- TEMホルダーシミュレーション : ホルダー連動シミュレーションウィンドウを開きます(下記参照)。
TEMホルダーシミュレーション¶
回折図形をダブルティルト(または回転)の TEMホルダー と連動させるウィンドウを開きます。ホルダーの傾斜角を設定するとパターンと結晶方位が更新され、到達可能な方位をステレオネット上に表示できます(ver4.914 で追加)。ステレオネットを左ダブルクリックするとホルダー傾斜をその点に設定でき、Arrow keys をチェックしておくと矢印キーで傾斜をステップ送りできます。
描画オーバーレイのタブ¶
一般 (General)¶
スポット、ラベル、菊池線、デバイリング、その他オーバーレイの色を設定します。ここでの設定はすべての描画モードに反映されます。
菊池線 (Kikuchi lines)¶
ツールバーで菊池線が有効のときにアクティブになります。
- 反射の選択 : 描画する菊池線の元となる反射を選びます。結晶構造因子(\(\lvert F_{hkl}\rvert\) の上位 N 本)または 1/d 閾値(1/d がしきい値 (nm⁻¹) 以下のすべての反射)。
- 線の表現 : 線の太さ、菊池線の色、運動学的回折強度に従って描画(反射の Kinematical 強度で線の濃さを変える)を設定します。
- しきい値 : 旧来パラメータ。指定した d より大きい反射に対してのみ菊池線計算を実行します(互換のため残置)。
デバイリング (Debye rings)¶
ツールバーでデバイリングが有効のときにアクティブになります。
- 回折強度を無視 : チェック時はすべてのデバイリングを同じ色・強度で描画します(結晶構造因子を無視)。純粋に幾何的な比較をしたいときに使います。
- 指数ラベルを表示 : チェック時、各リングの近傍に (hkl) を表示します。
目盛り線 (Scale)¶
ツールバーで目盛り線が有効のときにアクティブになります。
- 2θ / 方位角 目盛り線 : 2θ は等散乱角(同心円)、方位角 は等方位角(中心からの放射状直線)を表します。色はそれぞれ独立に設定できます。
- 線の太さ : 目盛り線の太さ。
- 分割 : 隣接する目盛り線の角度間隔。
- 目盛りラベルを表示 : 目盛り線に数値ラベルを表示するか。
その他 (Misc)¶
マウス回転感度などの細々した設定です。
- マウス感度 : マウスドラッグ 1 ピクセルあたりの結晶回転量。
回折スポット情報¶
ブロッホ波法(Dynamical 計算)で計算された各反射の詳細を一覧表示します。スポットの詳細情報ボタン(強度計算パネル)または詳細チェックボックスで開きます。
模式図と定義¶
左上の模式図は、エワルド球上のベクトルと、表で使う量の定義を示します(\(\hat{\mathbf{n}}\) は試料表面の法線方向の単位ベクトル、\(\mathbf{k}\) は入射波数ベクトル、\(\mathbf{g}\) は逆格子ベクトル)。
- \(P_g = 2\,\hat{\mathbf{n}} \cdot (\mathbf{k} + \mathbf{g})\)
- \(Q_g = |\mathbf{k}|^2 - |\mathbf{k} + \mathbf{g}|^2 = -\mathbf{g} \cdot (2\mathbf{k} + \mathbf{g})\)
- 励起誤差: \(S_g = \dfrac{\sqrt{P_g^2 + 4 Q_g} - P_g}{2}\)
- 評価関数: \(R = |\mathbf{g}|\, Q_g^2\) — 反射を励起の強さで順位付けする量(小さいほどエワルド球に近く=強く励起される。透過波 \(g=0\) は \(R=0\) で先頭)。表は \(R\) の昇順に並びます。
表の各列¶
| 列 | 意味 |
|---|---|
| R | 評価関数 \(R = \lvert\mathbf{g}\rvert\, Q_g^2\)(上記。反射の選択・並べ替えに使用) |
| h, k, (i,) l | ミラー指数(i は六方晶の冗長指数で、六方晶のときのみ) |
| d | 面間隔(nm) |
| gX, gY, gZ | 逆格子ベクトル g の成分(1/nm) |
| |g| | g の大きさ(1/nm) |
| Vg re / Vg im | 弾性散乱に対する結晶ポテンシャルのフーリエ係数 \(V_g\)(実部・虚部) |
| V'g re / V'g im | 熱散漫散乱(TDS)に対応する虚(吸収)ポテンシャル \(V'_g\)(実部・虚部) |
| Sg | 励起誤差 \(S_g\)(上記。1/nm) |
| Pg | 補助量 \(P_g = 2\,\hat{\mathbf{n}}\cdot(\mathbf{k}+\mathbf{g})\)(上記) |
| Qg | 補助量 \(Q_g = -\mathbf{g}\cdot(2\mathbf{k}+\mathbf{g})\)(上記) |
| Φ re / Φ im | 出射面における動力学的回折波の複素振幅 \(\Phi\)(実部・虚部) |
| |Φ|^2 | その反射の回折強度 \(\lvert\Phi\rvert^2\) |
| Σ|Φ|^2 | \(\lvert\Phi\rvert^2\) の累積和(全反射の和。強度保存の確認に使える) |
ポテンシャルの単位とその他のコントロール¶
- Unit of potential : ポテンシャルの表示単位を Vg [eV](電位、eV)と Ug [nm⁻²](ブロッホ波方程式に入る換算量 \(U_g = (2 m_0/h^2)\, V_g\))で切り替えます。単位に応じて表の列見出しも Vg / V'g ↔ Ug / U'g に変わります。
- 表上部に、加速電圧・波長(\(\lambda = 1/k_\text{vac}\))・相対論的質量比 \(m/m_0\)・速度比 \(v/c\)・格子体積・試料厚さ・(CBEDモードの)電子線の最大半角が表示されます。
- Note 1: 長さの単位は Å ではなく nm。Note 2: 波数の単位は 2π/nm ではなく 1/nm。
- Effective digit : 表に表示する有効桁数。Auto resize row width : 列幅の自動調整。Copy to clipboard : 表を表計算ソフトへ貼り付け可能なテキストとして出力します(このフォームは日本語UIでも英語表示です)。
検出器ジオメトリ¶
検出器の幾何(カメラ長・傾き・回転)と、実験像の重畳を詳細に設定するウィンドウです。検出器ジオメトリパネルの 詳細 から開きます。
検出器ジオメトリ設定¶
カメラ長・検出器の傾き(Tau / Phi)などの反射幾何を与えます。Back Laue(後方反射ラウエ)では、ここで検出器を線源側に置く幾何を設定します。
検出器領域と重畳画像¶
検出器の有効領域を指定し、実験像をドロップして重畳します。シミュレーションパターンと実験像を重ねて検出器幾何を合わせ込むのに使います。
座標系の定義は 検出器座標系 も参照してください。
動的圧縮¶
高圧(動的圧縮)実験の圧力・時間プロファイルを走査するためのウィンドウです。.txt の圧力/時間プロファイルをこのウィンドウにドロップして読み込み、グラフ上の赤線をドラッグすると、その時刻(圧力)に対応する状態を回折パターン側に反映しながら連続的に走査できます。
















