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EBSDシミュレーション (EBSD Simulation)

EBSDシミュレータ は、走査電子顕微鏡(SEM)で得られる電子線後方散乱回折(EBSD)パターン(菊池パターン)を、第一原理的にシミュレーションします。後方散乱電子(BSE)の方位・エネルギー・侵入深さの分布をモンテカルロ法で求め、結晶の動力学回折(ブロッホ波法)による マスターパターン を計算し、現在の結晶方位に対して検出器面へ投影します。

EBSDシミュレータ

ウィンドウは3列で構成されます。

  • 左列 — シミュレーション条件。タブで SEM-EBSD設定(試料・検出器の幾何条件と3Dビュー)、BSE分布(後方散乱電子分布)、補助図形(菊池線などのオーバーレイ)を切り替えます。
  • 中央列 — 現在の結晶方位に対するEBSD(菊池)パターン。
  • 右列 — 方位に依存しないマスターパターン(2D投影・3D球)。

シミュレーションの流れ

マスターパターンを構築 を押すと、以下が順に実行されます。

  1. モンテカルロBSEシミュレーション — 現在の結晶組成・密度・加速電圧・試料傾斜を使い、約250万本の電子を試料中で追跡します(弾性散乱: Mott/NIST 断面積、非弾性散乱: 誘電応答モデル)。後方散乱電子の「侵入深さ × 射出方位 × 射出エネルギー」の同時分布が得られます。
  2. レンジの自動決定 — 上記分布から、動力学計算に使うエネルギー範囲(入射エネルギーからエネルギー損失の約80パーセンタイルまで)と深さ範囲(侵入深さの約99パーセンタイルまで)が自動的に設定されます。
  3. マスターパターンの構築 — 各エネルギー・各深さについて動力学回折(ブロッホ波法)を解き、モンテカルロ分布で重み付けして全方向(球面)の後方散乱回折強度を積算します。結果は等面積(Rosca–Lambert)格子に格納されます。
  4. 検出器面への投影と重み付け — 現在の結晶方位に対して、検出器の各画素が見込む方向の強度をマスターパターンから引き、菊池パターンとして描画します。必要に応じてBSEの方位・エネルギー分布で重み付けします。

エネルギー範囲・深さ範囲などはステップ1・2で自動設定されますが、構築前に手動で調整することもできます。


SEMのセッティング

SEMのセッティング

  • エネルギー — 入射電子線の加速電圧(keV)。
  • 波長 — 電子線の波長(Å)。エネルギーと連動します。
  • Sample tilt — 試料の傾斜角(通常70°)。EBSDでは試料を大きく傾けることで後方散乱電子の収量を高めます。

EBSDのセッティング

EBSDのセッティング

  • 検出器の傾き — 検出器(蛍光板)の傾き。
  • 検出器の半径 — 検出器の半径(mm)。描画されるパターンの視野角を決めます。
  • 検出器の中心位置 — 照射点を原点とした検出器中心の位置(Y, Z)(mm)。

幾何条件は SEM-EBSD設定 タブの3Dビューで確認できます。

3Dジオメトリ

灰色の板が試料、緑の円筒/円錐が検出器、紫の +Z (=beam) が入射電子線です。試料に固定された結晶の a / b / c 軸も表示されます。鳥瞰図表面法線方向X軸 (試料回転軸)Z軸 (電子線入射方向) のボタンで標準的な視点に切り替えられます。座標系の定義は Appendix A2. 検出器座標系 を参照してください。


BSE分布

BSE分布

BSE分布 タブには、モンテカルロで求めた後方散乱電子の分布が表示されます。分布を計算 で再計算できます。

  • ステレオネット — 後方散乱電子の角度分布(射出方向のヒストグラム)。中心が表面法線方向で、黄/橙の枠は検出器が見込む領域を示します。軸を描画 で結晶軸を重ねられます。色スケール(Min / Max・Resolution・Color)を調整できます。
  • ΔE (keV) — 後方散乱電子のエネルギー損失分布。
  • 深さ (nm) — 後方散乱電子の最終的な侵入(脱出)深さ分布。

これらの分布は 電子飛程 と同じモンテカルロエンジンで計算され、マスターパターンの重み付けに使われます。


マスターパターン

マスターパターン

マスターパターンは、方位に依存しない全方向の後方散乱回折強度です。マスターパターンを構築 で動力学理論により計算します。

  • 2D表示(左) — 半球の等面積投影。半球 で投影する半球(+Z / −Z)を選びます。
  • 3D表示(右) — 強度をマッピングした球。マウスで回転でき、右上のインセットに結晶軸(a/b/c)が同期表示されます。結晶軸のラベル / 結晶軸の3D表示 で軸ラベル・軸矢印の表示を切り替え、指定軸から投影 で指定したゾーン軸 [u v w] 方向から眺めます。
  • Min. / Max.・ネガ/ポジ・色 — 表示強度の範囲、ネガ/ポジ、カラースケール。
  • Energy / Depth スライダー — 表示するエネルギー・深さスライスを選択します。
  • いずれの図も コピー でクリップボードへコピーできます。

動力学計算のパラメータ

動力学計算のパラメータ

  • 計算に取り入れる波の数 — ブロッホ波計算に取り入れる回折波(ビーム)の本数。多いほど精密ですが計算時間が増えます。
  • グリッド — マスターパターン格子の分解能(既定256)。
  • エネルギー範囲(… ~ … ステップ …) — 積算するエネルギー範囲とステップ(keV)。モンテカルロ結果から自動設定されます。
  • 深さ範囲(… ~ … ステップ …) — 積算する深さ範囲とステップ(nm)。同じく自動設定されます。
  • 非局所形式の吸収モデルを使う — 非局所形式の吸収モデルを使います。
  • 熱散漫散乱 (TDS) 由来のバックグラウンドを含める — 熱散漫散乱由来のバックグラウンド強度を含めます。

EBSDパターン

EBSDパターン

中央パネルに、現在の結晶方位に対するEBSD(菊池バンド)パターンが表示されます。

  • 動力学EBSDパターンを表示 (要マスターパターン構築) — 構築済みのマスターパターンを検出器面へ投影します。
  • 補助図形を表示 — 菊池線・指数などのオーバーレイ(下記)を重ねます。
  • 出力パラメータ
  • 後方散乱電子のエネルギー・方位分布を考慮して画像を合成 — チェックすると、単一スライスではなくBSE分布(エネルギー・深さ・方位)で重み付けして合成します。
  • Energy / Depth — 上記をオフにしたとき、表示するエネルギー・深さスライスを指定します。
  • 明るさ最小 / 最大)・ネガ/ポジカラー — 明るさの範囲、ネガ/ポジ、カラースケール。
  • コピー — パターンをクリップボードにコピーします。

補助図形

補助図形

補助図形 タブで、パターンに重ねるオーバーレイを設定します。

  • 背景色 — 背景色。
  • 検出器の輪郭 — 検出器の輪郭。円を表示(外周円)・メッシュを表示(格子)。
  • 菊池線を表示 — 菊池線を描画。線の太さ構造因子を線の色に反映
  • 菊池線の指数を表示 — 菊池線(バンド)の指数表示。
  • 晶帯軸の指数を表示 — 晶帯軸の指数表示。
  • 菊池線の範囲 — 描画する菊池線の選定基準。構造因子上位 N 本=構造因子の大きい順)または 1/dの閾値(1/d がしきい値以下)を選びます。
  • 文字設定 — 指数ラベルの サイズ(文字サイズ)・

関連項目