歳差電子回折 (PED) シミュレーション¶
PED (Precession Electron Diffraction) シミュレーションは、入射ビームを歳差運動させた際の回折パターンを計算します。
概要¶
PEDでは、電子ビームを光軸を中心に円錐状に歳差運動させます。ビームの各方向で得られた回折パターンを積算することで、通常のSAEDに比べて以下の利点があります:
- 動力学効果が平均化され、運動学的強度に近い強度比が得られる
- 高次のラウエ帯 (HOLZ) 反射がより明瞭に観測される
- 構造解析に適した強度データが得られる
設定¶
回折シミュレータの シミュレーション条件 で、入射ビームモードを 歳差 (電子) に設定します。自動的に動力学理論が有効になります。
パラメータ¶
| パラメータ | 説明 | 推奨値 |
|---|---|---|
| 半頂角 | 歳差の半角 (mrad) | 10–40 mrad |
| ステップ | ビーム方向のサンプリング数。多いほど精確だが計算時間増加 | 36–72 |
| 回折波の数 | 動力学計算に使用するブロッホ波の数 | 50–200 |
| 試料厚み | 試料厚さ (nm) | — |
計算手法¶
- 歳差角 α で入射ビーム方向を変化させながら、各方向で動力学計算(ブロッホ波法)を実行
- すべてのビーム方向に対する回折パターンを積算(平均化)
- 結果を検出器上に投影
計算時間: Step × ブロッホ波計算 = 全計算コスト。Step を大きくすると精度は向上しますが、計算時間は線形に増加します。
SAEDとの比較¶
| 特徴 | SAED | PED |
|---|---|---|
| ビーム | 平行・固定 | 歳差運動(円錐走査) |
| 動力学効果 | 大きい | 平均化されて小さい |
| HOLZ反射 | 弱い | 強く出現 |
| 強度の信頼性 | 構造解析には不十分なことがある | 構造解析に適する |
| 計算時間 | 短い | 長い |